固有値と固有ベクトル
“固有ベクトルは写像によってぐらつかない方向、固有値はその伸縮の倍率です。”
数式
Av = λv (v ≠ 0); det(A − λI) = 0読み方: 固有ベクトルvはAによる変換でも向きを保ち、λ倍にスケールされるだけ——その倍率λが固有値
- A
- — 正方行列——空間の変換
- v
- — 固有ベクトル——この写像によって向きが変わらないベクトル
- λ
- — 固有値——その向きが伸び縮みする倍率
- det(A−λI)=0
- — 固有値を求めるための特性方程式
きっかけ
行列が空間をどのように回転させようとも、決して向きを変えない特別な軸が存在します。
やさしく言うと
変換Aを施すと、ほとんどのベクトルは向きがずれてしまいます。しかし特定の特別なベクトルvは向きを保ったまま、倍率λでスケールされるだけです。このようなvを固有ベクトル、倍率λをその固有値と呼びます。
直感
変換を「空間を伸ばしたり回転させたりするもの」と見ると、固有ベクトルはその回転軸——ぐらつかない方向のようなものです。地球が自転しても地軸上の点が向きを保つように、固有ベクトルの向きはその写像によって保たれます。λはその軸がどれだけ伸びるかを表します。
どう作られるか
Av=λvを整理すると(A−λI)v=0になります。v≠0でこれが解を持つには、行列A−λIが「潰れて」いる必要があり、その条件がdet(A−λI)=0です。この特性方程式をλについて解くと固有値が得られ、各λを代入し直すと固有ベクトルが求まります。
例
A=[[2,1],[1,2]]の場合:det([[2−λ,1],[1,2−λ]]) = (2−λ)²−1 = λ²−4λ+3 = (λ−1)(λ−3) = 0なので、λ=1, 3。λ=3の固有ベクトルは(1,1):A(1,1)=(3,3)=3(1,1)。λ=1の固有ベクトルは(1,−1):A(1,−1)=(1,−1)。
よくある誤解
固有ベクトルは特定の長さの矢印ではなく、向きのことです。(1,1)が固有ベクトルなら、(2,2)や(−5,−5)も同じ固有ベクトル(同じ向き)です。重要なのは向きとその倍率λであって、大きさではありません。
どこで使うか
GoogleのPageRank(ウェブの固有ベクトル)、振動と共振の固有振動数、量子力学のエネルギー準位、主成分分析(PCA)、橋や建物の構造的安定性——システムの「自然な軸」を探すあらゆる場面で固有値が現れます。
どこから来たか
オイラーが回転の研究でその種をまき、20世紀初頭にヒルベルトが「eigen」(ドイツ語で「固有の」)という言葉を当てました。量子力学の登場とともに、物理学の中核的な言語になりました。
前提概念
確認問題
対角行列[[3,0],[0,5]]の固有値の一つはどれですか?
- 4
- 3✓
- 0
- 8
練習
A=[[2,0],[0,7]]の2つの固有値のうち、大きい方を求めなさい。
答え: 7
- 対角行列の固有値はその対角成分2と7
- 大きい方は7
ポイント: 対角行列や三角行列では、対角成分がそのまま固有値です。
上三角行列A=[[4,1],[0,4]]の固有値を求めなさい。
答え: 4
- 三角行列の固有値は対角成分
- どちらも4(重複した固有値)
ポイント: 三角行列ではdet(A−λI)がそのまま対角成分に因数分解されます。
A=[[2,1],[1,2]]についてdet(A−λI)=0を解き、大きい方の固有値を求めなさい。
答え: 3
- (2−λ)² − 1 = λ² − 4λ + 3
- = (λ−1)(λ−3) = 0 → λ=1, 3
- 大きい方は3
ポイント: 特性方程式det(A−λI)=0から固有値が求まります。
(1,1)がA=[[2,1],[1,2]]の固有ベクトルであることを確かめ、その固有値を求めなさい。
答え: undefined
- A(1,1) = (2・1+1・1, 1・1+2・1) = (3,3)
- (3,3) = 3・(1,1)なので向きが保たれており、固有値λ=3
ポイント: 固有ベクトルかどうかは、Avがvのスカラー倍になっているかを見るだけで確かめられます。