線形変換
“行列は名詞ではなく動詞——空間を動かす動きそのもの。”
数式
T(v) = Av, T(u+v) = T(u)+T(v), T(cu) = c·T(u)読み方: 点vに行列Aを掛けることで、加法とスカラー倍を保ちながらvを動かす写像
- A
- — 写像を定める行列——その列は基底ベクトルの行き先を表す
- T(u+v)=T(u)+T(v)
- — 加法性——動かしてから足すのと、足してから動かすのは同じ
- T(cu)=c·T(u)
- — スカラー倍——伸ばしてから動かすのと、動かしてから伸ばすのは同じ
きっかけ
行列はただの数字の表ではありません——空間全体を一度に動かすひとつの「動き」です。
やさしく言うと
線形変換は、平面(や空間)のすべての点を動かしながら、格子線をまっすぐで等間隔のままに保ち、原点を固定します。この整然とした動きは、たった1つの行列で完全に表せます。
直感
ゴム製の方眼を思い浮かべてください。線形変換はそれを伸ばしたり、回転させたり、せん断させたりしますが、決して曲げたり破いたりしません。まっすぐな線はまっすぐなまま、平行な線は平行なままです。驚くべき事実は、基底ベクトル(1,0)と(0,1)がどこへ行くかさえわかれば、すべての点の行き先が決まるということです——そしてその2つの行き先こそ、行列の2つの列そのものなのです。
どう作られるか
重要なのは2つの規則だけ——加法性T(u+v)=T(u)+T(v)とスカラー倍T(cu)=cT(u)です。この2つがあれば、どんなベクトルも基底ベクトルの組み合わせに分解し、それぞれを動かして足し合わせることができます——これこそ行列とベクトルの積Avが変換そのものである理由です。
例
A=[[2,0],[0,3]]はxを2倍、yを3倍に伸ばします。点(1,1)は(2·1, 3·1)=(2,3)へ移ります。列(2,0)と(0,3)は、それぞれ(1,0)と(0,1)の行き先です。
よくある誤解
行列の掛け算は「暗記するだけの規則」だという誤解があります。実際には、あの独特な規則は変換を次々に適用していく自然な結果であり、だからこそ順序が重要になるのです(AB ≠ BA)。
どこで使うか
コンピュータグラフィックスでの回転・拡大縮小・投影、ロボットアームの座標変換、データサイエンスの次元削減(PCA)、物理学での座標系の変換——空間が秩序立って形を変えるあらゆる場面に線形変換があります。
どこから来たか
ケイリーは1800年代半ばに、行列を「変換を記録する表」として導入しました。方程式を解くための道具のはずが、空間の動きを表す記法だったのです。
前提概念
確認問題
行列[[0,−1],[1,0]]をベクトル(1,0)に適用しなさい。(この行列は90°回転です。)
- (1,0)
- (0,1)✓
- (−1,0)
- (0,−1)
練習
A=[[2,0],[0,2]]を(3,5)に適用し、像のx成分を求めなさい。
答え: 6
- x成分 = 2·3 + 0·5
- = 6
ポイント: 対角行列は各軸をその成分の倍率で伸ばす。
せん断A=[[1,1],[0,1]]を(2,3)に適用し、像のx成分を求めなさい。
答え: 5
- x成分 = 1·2 + 1·3
- = 5(y成分は3のまま)
ポイント: せん断は高さに比例して横にずらす。
A=[[3,0],[0,3]]を(4,4)に適用し、像のy成分を求めなさい。
答え: 12
- y成分 = 0·4 + 3·4
- = 12
ポイント: 3倍拡大の行列は、すべての点を原点から3倍遠ざける。
(1,0)と(0,1)の行き先を知るだけで、すべての点の行き先がなぜ決まるのか、ノートに説明しなさい。
答え: undefined
- 任意の点(a,b) = a·(1,0) + b·(0,1)
- 加法性とスカラー倍によりT(a,b) = a·T(1,0) + b·T(0,1)
- だから2つの基底の行き先だけですべてが決まる
ポイント: 線形性=部分(基底)を知れば全体がわかるということ。